数学月間の会

MAM2002

Mathematics Awareness Month ( MAM )――April, 2002

   「 Mathematics and the Genome/ 数学と遺伝子 」


数学連合政策会議 ( JOBM )は,今年のMAMは我々自身の遺伝子の理解への数学の貢献に焦点を当てると公表した.

人ゲノムの配列の解読がまじかに迫り,我々のすべての遺伝子,あるいは染色体中にあるもののカタログができると,科学者はもちろん我々すべてが,基本的な医学的,生物学的問題に対する非常に大きな洞察の鍵を手に入れたと感じるだろう.不幸にして,我々がこれらのプロジェクトからの新しいデ−タの洪水につぶされているとしても,新しいデ−タの蓄積を解釈したり使ったりする問題が起きて,将来実現するであろう生命科学の方法に挑戦することになろう.数学はこのデ−タを扱ったり理解したりするのに中心的な貢献をして,将来の解析に大変大きな役割を演ずるであろう.

ゲノム配列解析のデ−タ収集が自動化されて来たので,大きくて速い効率的なコンピュ−タ・アルゴリズムが,実験者が順序解読した断片から遺伝子を再構築したり,おびただしい順序データ中の遺伝子の位置づけを行うのに利用された.遺伝子の静的な図は殆ど手中にあり,蛋白質の動的システムや遺伝子が作るRNAの研究や,深遠で複雑なシステムが如何に制御されているかの研究に移行している.機械学習の動的システム手法と統計学の両方が,ゲノムの制御システムの巧みな処理を解明するのに使われている.統計学における挑戦的な課題が,実験から導かれるであろう情報を最適化するような実験を計画するために使われてきた.これらの技術は,腫瘍の型の分子的サインの識別や,診療所で癌治療の処方箋に使われている.マイクロアレイ技術は,何千という可能性のある遺伝子生成物を同時に測定し,ゲノムのダイナミックスのスナップショットをとることができる.大きな生命分子のコンピュ−タ・モデルは今や製薬工業における製薬発見の中心となっている.

MAMポスタ−は今日の遺伝子科学の数学的観点を強調している.今年のMAMプログラムは人ゲノムを理解し,数理科学の医学・生物学における役割を探究するために科学者,教育者や政策決定者に資源を用意するであろう.

数学は,人ゲノムプロジェクトの多量なデ−タベ−スの管理と解析を可能にする.数量的解析,統計学やモデル化が,我々各自の独自性を決定する遺伝子情報の青写真であるDNAの地図づくりと配列決定で重要な役割を演じている.研究者は,数学と生物学の融合が,病気の診断,処置や予防を,個別に特定して行い,非常に成功するようになる分子医学の新しい時代の到来を予言する.
「 遺伝子学の背景 」
我々の身体のあらゆる細胞の中に,23対の染色体として,遺伝的情報のセットが含まれる.DNAから最初に作られた長い鎖である染色体は,我々の細胞にあるコイル状の長い糸のような分子である.各染色体は次々に糸の上にあるビ−ズの様に見える遺伝子を持っている.- - - -
Tani/Katase
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MAM2003

Mathematics Awareness Month ( MAM )――April, 2003

   「 MATHEMATICS AND ART/ 数学と芸術 」


数学と芸術のかかわりは,何千年も前に遡る.古代ギリシャ人,ローマ人は,数学を彫刻や建物の審美的設計に利用した.15世紀に,レオナルドダビンチは,”私を数学者でないとは言わせない”と書いている.16世紀に,デューラーは描画に遠近法を導入し数学を用いた.18,19世紀には,ゴチック大聖堂,バラ窓,モザイク,タイル張りのデザインに,数学は積極的に取り入れられた.20世紀では,幾何学的形態は,キュービストや多くの抽象表現芸術家にとって基本であった.この十年では,作品の基礎にトポロジーを用いる彫刻家がいくつかの賞を得ている.数学と芸術の密接な連携は,オランダの芸術家M.C.エッシャーの作品中に見られる.数学概念のうちで,彼の作品に現われたものは;無限,メビウスの帯,モザイク細工(平面分割),変形,反射,プラトン立体,らせん,対称性,双曲平面などである.
MAM2003のポスターは,エッシャー流のコンピュータが描く,双曲平面のポアンカレ・モデル平面分割で,Douglas-Dunhamによる. Tani/Katase
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MAM2004

数学強調月間 ( MAM )―――2004年4月

「 The Mathematics of Networks/ ネットワ−クの数学 」

 人間の遺伝子連鎖の解明されるまでの研究成果の裏話を述べるにあたり,多くのジャ−ナリスト達は遺伝子の数を引用して,予想より非常に少なかった事を指摘した.
事実,人間の遺伝子の数は蠅の様に大体同時に連鎖された他の有機体の遺伝子の約3倍程度である事が判明した.これは,如何にしてできたのか?
その答えは有機体の遺伝子の数ではなく,むしろ遺伝子を連結する相互連絡の仕組みが
有機体の複雑さを決定するという事である.今日,多くの科学者たちは遺伝子の網状組織に焦点を当てて,その解明に日夜努力している.物理学,社会学,伝染病学,経済学 等 他の多くの分野で網状組織( ネットワ−ク )を研究している人がいて,遺伝子研究者は,その研究者と補完的な研究をおこなっている.幸いな事に これら多様な科学者たちの研究はどんどん発達して,且つ尚進化しつつある数学の領域 所謂「 グラフ理論 」( Graph Theory )を応用して それ等の網状組織( ネットワ−ク )に関する有用な知識を得て,科学者たちは仕事をしている.彼等は応用科学者や数学者も又チ−ムに組んで新しい方向を探りながら動いている.我々は,これらすべて研究分野を通して,2004年の数学強調月間において,「 ネットワ−クの数学 」をやり甲斐のあるテ−マとする.我々は更に刺激的な領域について学んでいく為に,同封するポスタ−,論説やWeb(それ自体が最も研究されているネットワ−クの一つ)の利用を通じ勇気づけていきたい.
Funada/Katase

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MAM2005

数学強調月間 ( MAM )――4月, 2005

   「 Mathematics and the Cosmos/ 数学と宇宙 」

数学はあらゆるレベルで宇宙を理解しようとする我々の試みの中心にある.リ−マン幾何やトポロジ−は宇宙のモデルを提供する.数量的シミュレーションは大規模動力学を理解する助けとなる.天体力学は太陽系を包括する鍵を握っている.数学的ツ−ルの広い多様性は我々を取り囲む空間を実際に探査する為に必要になってくる.
米国の数学会,統計学協会,数学協会と工業応用数学協会は,2005 年MAMのテ−マを「数学と宇宙」にすると公表している.
数学は最も理論的なところから最も世俗的なところ迄あらゆるレベルで宇宙を理解する我々の試みの中心にある.現代の宇宙論は,3次元から多次元の湾曲した空間概念に沿って空間の性質を考えたリ−マンのアイデアに基づき,アインシュタインによって4次元時空間が採用された.重力は幾何であるというアインシュタインの基本的な洞察である.彼の有名な場の方程式から,アインシュタインは理論的な根拠に基づいて,重い対象物のそばを通過する時光線が曲がること,水星の近日点の歳差の正確な量,宇宙の膨張,ブラック・ホ−ルの存在,連星の挙動,重力波の存在を演繹し,それらの正当性を確証する実験を導いた.
直接実験の領域に関しない場合でも,他の数学的方法が銀河系と星団,銀河系とブラック・ホ−ルの衝突や他の大規模な重力の相互作用運動のシミュレーションを実行するのに重要である.太陽系のレベルではニュ−トンによって始められ,引き続く世紀を越えて生み出された数学的方法が,潮汐の動き,地球の赤道のふくらみ,以前には知られていなかった惑星の存在,彗星の軌道と戻り時間や丁度過去10年に彗星軌道を行く他の星の存在を説明し予測した.
実際に宇宙探査の領域では,数学的技術は月や火星や他の惑星に到達する有効な軌道を計画し誘導するためや,土星へのカッシニ・ミッションからの最近の壮大な写真を,数億マイルの宇宙を超えて送るための,符号化,圧縮,伝達に使われる.   Tani/Katase

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「テ−マ・エッセイ」
  ◇ 数学と宇宙  Robert Osserman
  ◇ 宇宙の形   Sarah J.Greenwald
    ◇ 天体力学   Richard Montgomery
    ◇ 宇宙探査   Robert Osserman
◇ ブラック・ホ−ルからダ−ク・エネルギ−へ:21世紀の宇宙論
         Robert Osserman
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SGK通信(11)

SGK懇談会---開催案内(第3報)

「数学月間について話し合いましょう」

日時:2006/7/22,11:30-2:00
場所:シーボニア(星陵会館4F,日比谷高校内)
会費:¥3000円

SGK顧問の山崎圭次郎先生もご参加予定です.
米国MAMの興味あるお話が伺えそうです.

数学文化の普及,教育,数学と諸科学・産業との連携分野,
種々分野の統計学,解析・シミュレーション,インターネット,暗号,.....幅広い分野の皆様のご参加をお待ちします.

参加申し込み:SGK世話人まで
 谷:tani@rdc.ricoh.co.jp
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SGK通信(9)

数学と社会の架け橋を求めるメディアの声がしばしば登場するようになつた.朝日,社説,「数学の力」06/06/13,日経,続ニッポンの力「技術立国揺らぐソロバン」06/02/27など.本協会が掲げる数学文化の向上,浸透の必要性は衆目の痛感している所のようだ.

数学月間に適した将来の取り組みテーマについて,気軽に話し合いましょう.
(これまで,話題になったものの列挙)

1.エレベータの制御.通信.暗号.金融.
暗号は,米国MAMの本年テーマである.日本の実情に関するエッセイが欲しい.
講演会.講習会.研究会に発展させたい.

2.統計学の応用
医療.診療.治療.医薬.
社会心理学の解析.考古学.
各分野向けの研修会,研究会を求める声が多い.

3.数学力の進出/連携
バイオ.新材料.情報通信.生物学.工学.
諸科学・産業と数学の連携「礎の学問:数学」シンポジウムでの提言があった.→SGK(3)
各科学分野との発展.エッセイ,シンポジウムが望まれる.

4.企業経営.工程管理

5.ソロバン大会復活
ソロバン+パソコンの駅伝大会.脳機機能計測等

6.数学の魅力アピール
イベント.講習会.市民講座

7.数学と財政再建
小野晋也議員(著書:山田方谷の思想)提唱課題.TQMの地方行政への導入など.
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SGK通信(10)

米国MAW/MAMの概要紹介の第2弾です.
今回は,1996年〜2001年の分を公開します.
インターネット(1997)のレビューは,
会員の船田智史氏の協力を頂きました.

前回同様,誤訳発見やコメントなどお寄せください.
(もし,誤り等あれば,谷に責任があります.)
SGKの意見交流の材料にしていきましょう.

どこかの年度に興味をもたれて,個別のエッセイを探索し,
翻訳されたりした場合は,ぜひ投稿ください.
SGK通信を充実していきましょう.
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MAM1996

数学強調週間 ( MAW )――4月21〜27日, 1996

  「 Mathematics and Decision Making/ 数学と意志決定 」

数学連合政策会議 ( JPBM )は,諸君を数学強調週間4月21〜27日,1996年の期間に,数学の広がりと深さの祝典に御招待する.1996年のMAWのテ−マは「数学と意志決定」で,その話題の広さと範囲は,多くの聴衆に対し数学の力と多様性を伝える一つの焦点として有用である.
我々は毎日多くの意志決定をしている.天気予報に従って,出掛けるル−トに合う服を決める.更に多くの意志決定が,商品やサ−ビスの提供者や公共政策の立案者に求められる.数学は多くの意志決定に対して,重要な役割を演じる.用いられる数学に対するよりよい理解は,我々を感動させるよりよい意志決定や理解力を助けるであろう.
数学と意志決定は,確率.危険.不確実や予言の様な概念を含んでいる.財務上の意志決定は,ポ−トフォリオ最適化.選択過程や危機管理の様な手法を組み入れる.オペレ−ション・リサ−チ ( OR:作戦計画 )――ある実際的行動を最適化する数学モデル――は政府や工業界で広く利用される.危機評価や管理は公共政策――特に健康と環境政策――をつくるのに重要な意味をもっており.通常の研究では容易に研究され得ない極端な状況へ如何に外挿するかというより広い論点を示唆する.
ここにより多くの聴衆を数学にさらす一つの機会がある.――新しい数学の創造と発見から意志決定に使える多くの方法を示す.我々は諸君に諸君の同僚と共に MAW 1996のために直接,計画を始めることをお薦めする.諸君は諸君の学園.会社.あるいはその地区の学校で特有なプログラムによる MAW 1996を観察することが出来る.アイデア発想のために祝典MAW 1995年に選ばれた活動の添付要約を見て下さい.

 エッセイ ( 試論 )」:数学と意志決定――
Paul Davis, Worcester Polytechnic Institute.17人の顧問団からの意見を編集した.

意志決定が我々の生活を形づくる.数学は,いかなる意志決定においても,情報をふるいわけ選択肢の比較を合理的に行う.数学的モデルが,コンピュ−タが生みだすデ−タの圧倒的流れを制御し理解して,意思決定を支援するコンピュ−タ・プログラムの基礎となっている.数学は,不確かさに直面して,情報の質を評価改良し,選択肢を明確に提示し,役立つ選択とその結果を示し,大きな目標に到達するのに必要な,小さな意志決定を制御しさえもする. 統計.最適化.確率.待合せ理論.制御.ゲ−ム理論.モデリングやオペレ−ションズ・リサ−チの様な数学――意志決定に用いる数学応用分野――は,公共政策,健康,ビジネス,製造業,財務,法律,その他の多くの人間の企てにおいて、難しい選択をするのに欠くことはできない.数学は,経済的な発電,金融市場での利益,有効な新薬の認可,法的証拠の優劣,航空機の安全,複合建設プロジェクトの管理や新ビジネス戦略の選択などの多くの意志決定における心臓部である. Tani/Katase
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MAM1997

数学強調週間 ( MAW )――4月20〜26日, 1997年

  「 Mathematics and the Internet/ 数学とインタ−ネット 」

   ◇ テ−マ・エッセイ
数学とインタ−ネットは,言語とシェクスピアの作品との関係とよく似ている.というのは,彼の作品は言語なくしては考えられないからである.一方,彼の作った詩や演劇の中では,逆に使われた「言葉」を豊かにしている.コンピュ−タは,数学という言語の中から生まれた.二進数がもとになって,コンピュ−タは言葉,音楽,画像などを表現させる事ができ,そして今や,PCマシンは 0と1の2数だけでインタ−ネットを通じてそれらを伝達する事ができる.コンピュ−タは,その様々な動作やインタ−ネットのアドレス設定,さらには情報検索エンジンさえも,数学の論理を使った公正なル−ルに従っている.インタ−ネットの世界では,数学はメッセ−ジや金銭取引の秘密保持の心臓部として,機能している.また,数学は,大容量ファイル伝送時のデ−タ圧縮,符合化およびエラ−修正のための基礎的ツ−ルである.また,数学は,電子メ−ルの住所管理やWWW(世界規模の情報検索=Web)検索のためのデ−タベ−スの土台であり,メッセ−ジ発送やネットワ−ク管理の代理人としての役割もある.また,インタ−ネットは,数学の学術研究や教育の進展に大きく貢献しているのだ.教育者や学術研究者のグル−プは,電子メ−ルやニュ−スグル−プ(会員制掲示板)さらには,特別なWebを通じて情報交換している.
また,インタ−ネットは,2000年間, 安全と考えられてきた慣例信号コ−ドを壊し,数十の国を通してコンピュ−タを横断的に結合する最近の協同努力ともいうべき分散処理(Distributed Computing)を支えている.
インタ−ネット上の管理デ−タ―――殆どの人が知っているように,インタ−ネットメッセ−ジ,電子メ−ル,画像,音声,デ−タベ−ス検索結果は,すべて0と1の連続信号として伝送される.数学はこの二進数への変換と伝送という二つの領域の中枢である.
インタ−ネットのセキュリティ―――インタ−ネット上のセキュリティは銀行の金庫室の安全と全く同様に重要である.
セキュリティの範囲は,メッセ−ジのプライバシー維持とコンピュ−タの完全保全であり,その他多くの問題の中で金銭取引の信用保持も含んでいる.
急速に進展しつつあるインタ−ネット市場は,例えば何百年来の古い整数論に過去20年の新しい知見を結びつけた秘密コ−ドに大きく依存している.
更に,このようなコ−ドを解読するための努力が,広く配置されたマシンで分散処理する様に,インタ−ネットを利用してなされる順番に行う分散処理は多数の素数因子に対する系統的探索に関するフェルマ−の古い手法を,近代的に拡張する決定的な方法で支えられている.
デ−タベ−スと検索―――Alta VistaとかYahooのような強力な検索エンジンによって,インタ−ネットユ−ザ−は全てのサイバ−空間に隠された専門化された情報の金塊を見つけ出す事ができる.これらほとんどの検索ツ−ルの心臓部は,キ−ワ−ドの索引にある.各々の索引は,キ−ワ−ドを含むWebサイトのエントリ−リストに載せられる.
(ある検索の索引で“数学”へのエントリ−は332,966サイトと表示される).
理想的な検索エンジンは,与えられたキ−ワ−ドについて全てのエントリ−索引を横切るだけでなく,検索者の要求に応じて
各表示サイトの関連可能性を反映した優先性評価をも返信する事である.
最新のある理論では,関連性のある幅広い検索は結果として索引の中に情報のベクトル空間モデルを導入する.空間の座標は索引の項目であり,誰もが検索できるキ−ワ−ドの語彙である.各Webサイトは,そのキ−ワ−ドの上でヒットする事で座標が決まる空間の一点である.そこでは多分最も関連するキ−ワ−ドに最大の座標値が与えられる.同類の情報を持つサイトは最寄りの空間中のある点によって代表される.
検索とは,非常に高次元の空間中で理想的には空間の次元より速くなる計算でもって,最も近い隣人を探す問題といえる.これらの空間にどのように情報が配分されるかという確率的モデルの割付けは標準的でない幾何学に導かれる.例えば不等辺三角形(二辺の和が残った一辺よりいつも長い)は役に立たない.むしろ,更なる効率的な検索演算法の発見への挑戦を複雑にする.代数的透視からキ−ワ−ド座標のベクトルは,情報サイト投射マトリックスに対してキ−ワ−ドの縦の列と考えられ,与えられたあるキ−ワ−ドに対応する列を横切って そのキ−ワ−ドを含む各サイトのいずれかにエントリ−する.最終目標は,キ−ワ−ド間の関係を明らかにする事によって,同類の情報をもつサイトを見つけ出す事である.
親戚関係デ−タベ−スの処理に関するル−ルは,そのデ−タベ−ス構造に対する代数的相関あるいは解析的相関により数学的に定義される.数学はデ−タベ−ス構成を記述するフレ−ムワ−クであり,数学的ツ−ルはそれらの効率と信頼性を改良するための基礎である.
経路とネットワ−クの構成―――中規模のロ−カルネットワ−クは相互に通信する一万組の結節を有する.彼等が分配するメッセ−ジは,ネットワ−クのトラック上を光の速度で走っている列車のようなものである.汽車の各々の車両は1メッセ−ジの一部分を運ぶ,それはあたかも長い手紙が一連の多数の葉書に別けて書かれ,それが車両一台に一枚づつ別けて乗せられるようなもので,通常一つの列車には多くのメッセ−ジからの葉書が混載される.待合わせ理論(Queuing Theory)の数学的思考は,これらのメッセ−ジの束の大きさと列車の到着のパタ−ンに関する情報に基いてメッセ−ジを取り扱う通信方式の挙動を予測する事ができる.(古典的待合わせ理論では顧客の到着パタ−ンと窓口時間が与えられると銀行での待ち時間を見積もる事ができる.)しかし交互メッセ−ジを扱う方式の研究はメッセ−ジ交通の数学的モデルに基いている.良いモデルは新しい方式が待合わせ理論の予測と実際に同様な形になる事を保証し,悪いモデルは方式を開発する人に履行し得ない事を約束させる事態に導くだろう.
情報検索(Web)上の数学―――数学者はインタ−ネットとWWW=Webの利得をフルに享受している.これらのツ−ルは彼等に教育と学術研究の向上のため地理的或いは学問上の境界を超えてアイディアと技法,そして資源を共用させている.
数学とインタ−ネット―――数学はインタ−ネット操作の言語である.
それは言葉や映像を叙述する二進数からWWW=Web=情報検索に対する検索エンジンの複合的デ−タ構造に至るまでを含む.
整数論のような分野からの新旧アイディアの巧みな組み合わせによって,金銭取引保証に関するデ−タ暗号化のようなインターネットのキ−テクノロジ−の開発が可能になった.
同時に,インタ−ネットによって,数学教師や研究者の間で世界規模的に協調が進み始めている.その協調によって,幼稚園から大学までの教育を促進し,又純粋数学と応用数学の最も難しい問題に対する我々の認識が高められつつある. Funada/Katase
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MAM1998

数学強調週間( MAW )――4月26日〜5月2日, 1998

   「 Mathematics and Imaging/ 数学と画像処理 」

医学,コンピュ−タ−科学,宇宙探検,その他諸々の分野の画像処理にとって,数学は基本要素である.例えば医学はインピ−ダンストモグラフィ応用の断層撮影技術の恩恵を受け癌性腫瘍の診断を大いに改善し,又動的解像法によってMRI磁気共鳴画像から心臓鼓動のイメ−ジを抽出できる様になった.コンピュ−タ−画像は,数学ツ−ルの全分野に依存している.ウェブレット変換は3次元映像を2次元画像の中で効果的に表現してコンピュ−タ・グラフィクスにより創出された画像が,現実感があり違和感のない可視実現となる.Microsoft百科辞書や同社の7000カラ−イメ−ジが,フラクタル画像圧縮技術により1個のCD-ROMに収納されている.画像圧縮技術は又宇宙探査の基本ツ−ルである.例えば火星探査衛星からの信号をモニタ−している科学者達は宇宙船が火星に到着するとき,僅かに毎秒40バイトのデ−タを受信するに過ぎない.(普通のモデムより700倍遅い)圧縮は通常イメ−ジデ−タを15乃至20の倍率迄通信速度を増加させている.画像の基本特性を損なわずに数百倍の圧縮比率に迄高めようとする新技術も間近であり,これらの新機軸の一つウェブレット画像圧縮は,既にFBIの指紋記録巨大圧縮ファイル(ア−カイブ機能による)にあって情報検索を可能にしている. イメ−ジ復元技術は種々の分野において他の方法では隠れたままになっているイメ−ジの細部を抽出する.人工衛星,医療画像装置,天体望遠鏡,そして法廷に証拠提出されるアマチュアのビデオ画面迄もが含まれる.

◇ テ−マ・エッセイ――政治家や広告屋は画像を加工したとしてしばしば告発される.多くの数学者にとって画像加工は身近なものになっているが,それは選挙を有利な方向にまわそうとか,売り上げを伸ばそうとかの次元ではない.これら科学者は,概念,ツ−ル,アルゴリズムを提供して,火星からの信号を使った電子映像,アマチュアのビデオテ−プから引き出した法廷での決定的証拠,機能臓器の画像による非侵襲的医学診断のような現代の奇跡に活躍している.
数学は種々の分野のイメージングで中核技術である.

--画像復元:法廷やNASAのラボで映像を鮮明にする.
--能動的光学:天体の鮮明な画像を宇宙飛行士に提供する.
--画像圧縮:FBIの指紋台帳,インタ−ネットのグラフィクス送信,宇宙写真の伝送
--トモグラフィ:外科手術なしに患者体内の癌性細胞を探査する.
--コンピュ−タグラフィクス:平面スクリ−ンに3次元映像を創出,表現,加工する.
--画像分析:血栓の大きさなど潜在情報を自動検出する.

現在要求されている数学は,マトリックス理論,偏微分方程式のような古典の現代応用からフラクタルやウェブレットのような新規概念にまでと幅広い.これら様々な応用の一つ一つで,数学は最新の科学計算や洗練された工学と並行して,基礎概念とアルゴリズムを定義して世界中の法廷,住居,研究所,オフィスで画像処理の道を開いている.
結論――古典の曲率論から最新のウェブレット迄数学思想は画像処理の根底を作っている.高速コンピュ−タと独創の工学と結合して,数学は我々を宇宙へ,そしてより鮮明に我々の体内に導いてくれる.数学と工業技術とのこのような結合は手許に巨大図書館を置いたかのように,又乱雑なデ−タの塊を可視化出来るようにして我々の世界観を照らし出す.数学は確実に我々自身と世界の視野を拡大している.Tani/Katase
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